研究開始~今環境分野が熱い!~

 GWが明け、僕の所属するゼミでもようやく活動が本格化してきました。僕の専門は一応、環境と地域づくりにという事になりますが、経済学や経営学などにも興味があり、軽くではありますが経済学類の授業もとっているといった感じです。まあそれはそれとして、三年生になると、僕の所属する学類ではゼミに配属されるのですが、僕の入ったゼミでは三年生の間、主に二つの活動をしています。一つは、本を読みながらその分野に関わる基礎知識や専門知識を身に付ける事。もう一つは他のゼミ生と共に(あるいは個人で)共同論文を作成し、4年生になり本格化するであろう卒業研究の練習をする、というものです。今回は今読んでいる本の紹介をしつつ、いま環境分野で世界が大きく動いているというところを紹介したいと思います。


 僕が今ゼミの活動で読んでいるのは「SDGsとESG時代の生物多様性・自然資本経営」という本です。扱っているテーマは題名の通りで、環境分野で最先端を走る国内外の大手企業の取り組みを多く紹介しています。全体は5つの部分から構成されており、まず第1部では世界のお金が環境分野に大きく流れている実態とその背景を解説。続く第2部、第3部ではこの本のメインとなる内容、様々な企業の取り組みが紹介されています。第2部の国内編で取り上げられるのはトヨタやイオン、日本水産、ソニーやサントリーなどといった誰もが知る日本企業です。さらに世界に目を向ける第3部では、ユニリーバ(紅茶のリプトンなど)やネスレ、イケア、グーグルなど、日本でも必ず目にする巨大企業が並びます。終盤の第4部では実際に環境評価やESGなどがどのように行われているのかを解説し、第5部では環境関連の語句をまとめ、本で紹介された数々の認証制度や枠組みの解説をおこなってくれています。


 あまり内容を詳しく説明するとネタバレになるのでしませんが、僕がこの本を紹介したのは環境がいかに今ホットな分野であるかが読めば一目瞭然になるからです。そして、この世界的ブームのただなかにある環境分野と、日本で近年盛んに叫ばれている「地方創生」の両方を同時に学んでいる僕が、環境と地域を繋げて研究する事に情熱を傾けている理由を感じ取って欲しいと思ったからです。


 色々と紹介したい事は沢山あるのですが、ひとまずここではESGと自然資本経営について簡単に書きたいと思います。

 まずはESGについて。ESGとは環境(enviroment)、社会(social)、ガバナンス(governance)の頭文字をとったもので、企業の非財務情報を投資の判断材料にする取り組みです。これら三つに対する企業の取り組みに基づいて投資対象を選択するのがESG投資であり、今世界的に注目されている分野になります。重要なのは非財務情報であるという点で、ESGが企業の持続可能性を長期的に判断する重要な指標であるという事です。環境問題や途上国での労働環境に関わる人権問題の解決にちゃんと取り組んでいる企業の方が、長期的に見て持続可能性が高く投資に値すると考えられます。世界ではこのESG投資額が急激に伸びており既にニ千兆円を超えています。日本国内でもESG投資を含めたサステイナブル投資が2014年には一兆円に満たなかったものが2016年には六十兆円規模にまで膨らんでいるそうです。

 もう一つ、自然資本経営について。自然資本経営とは簡単に言うと生物多様性と水や大気などの自然資源全体を「資本」ととらえる事で、それを財務資本と同じ経営基盤と位置づけ、この自然資本への負荷を減らしていく経営です。環境への配慮を単に道徳的だとか思いやりだとかで片付けず、合理的経営として見る動きが世界中で加速しています。具体的には合法的に取引された木材や水産資源の認証制度を利用したり(認証されればマークが付与され第三者機関に合法的かつ持続可能と保証される)、工場などで使う水の量を節約したりするなどです(他にもたくさんあります)。


 以前地球温暖化を取り上げた「脱炭素社会へ」のコラムでも同じことを書きましたが、日本はこうした環境分野の取り組みで世界に大きく後れをとっていると言われています。企業が環境へ投資するのは、それに伴って発生するコストを全て将来的に安定して高品質な原材料等を入手するためのリスク管理としてとらえているからです。企業の生存戦略として真剣に取り組んでいます。これを怠ってきた日本企業は、既に欧米勢に持続可能な原料の調達先を先取りされてしまい、調達先を変えようにも見つからないといった状況に陥る危険性があると言われます。その結果持続可能な調達先を作るために、今の調達先を育成するところから始めねばならず、これは企業にとって重い負担となるでしょう。加えて環境などに配慮していない企業は、持続可能性がないとみられ、投資家から投資をしてもらえなくもなります。日本の企業も大企業を中心に最近ようやく重い腰を上げつつあるというのが現状なので、今後急加速して欧米勢に追い付くことが求められます。


 さて、ここまで書いてきた事が地域づくりに繋がるというと、皆さんは不思議に思われるでしょうか? 詳しくは本を読んでいただきたいのですが、自然資本経営やESG投資にかかわる事柄は、日本において「地方創生」とリンクする部分がかなりあると本の中でも紹介されています。食品などを扱う企業は特にですが、彼らの製品の大元をたどれば地方にある農家に行き着きます。持続可能な経営のために農家にテコ入れをしている企業もあり、これが農業従事者数の維持や農家の発展に寄与する部分は大きいでしょう。また世界的な視野で見ても、原材料の調達は多くの場合発展途上国の農村部からの輸入であるため、その産地に積極的に投資をする事で持続可能な調達だけでなく、産地の生活水準の向上も期待でき、結果として企業にとっての新たな市場の開拓にもつながるという見方もあります。


 こうした日本や世界を牽引する大企業の取り組みは、現実に社会を大きく変える可能性を持っています。大企業はその傘下に多数の子会社やグループ会社をもち、そこに部品や原材料を納入する中小規模の企業、さらにその下の農家などまで遡ると非常に広範囲に及びます。サプライチェーン全体で抱える従業員の数は膨大なものになりますし、日本全国、あるいは世界各地に散らばっているのでその影響力は計り知れません。本では実際に企業の取り組みが地域を変えつつある事例も本には紹介されています。

 世界的に環境分野にお金や人が動いている事は疑いようがありません。この環境分野へのお金の流れから端を発し、僕自身が地域と環境を結び付ける事での地域づくりに可能性を感じたため、今研究したいと思っている事に繋がるのですが、ここまででかなりの文章量になってしまいましたので、今回はひとまずここで切りたいと思います。僕の興味についてはまた次回以降、調べた事もまとめながらご紹介しますね。


 一応、今日紹介した本が気になった方のために、アマゾンのリンクを下に貼っておきます。環境経済を学ぶ上で、これを一冊読めばひとまずの基礎知識は得られそうです。今現在、世の中のお金が環境投資に大きく動いている事が良くわかりますし、読んでいくうちに環境という分野に数多の可能性を見出すことができるのではないでしょうか。それに、自分が買い物をする時、商品を選ぶ意識が少し変わると思います。

地域学・どっと・こむ

金沢大学地域創造学類にて地域づくりについて本気で学ぶ現役大学生です。発展途上のサイトでまだまだ試行錯誤しながらですが、月に数本のコラムを投稿し、地域について考えるきっかけやアイディアが生まれるきっかけを創っています!

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