特集:お米と日本人 ①現状分析編

 今日は皆さんもよくご存じ、お米に関する話題です。実は大学の授業でお米について深く考える機会がありました。現在の消費量や都道府県別の生産量、歴史など様々な情報を授業と統計データからかき集め、最終的に「資源」と「主体」の結びつきや「資源」が環境や地域に与える影響について考察するレポートだったのですが、これがなかなか奥が深い。この授業を受けてから、米に限らず様々な食材がもつ価値や意味を気にするようになってしまいました。今回はそんな思いを皆さんと共有したく、コラムにしようと考えた次第です。

 

 さて、皆さんは毎日お米を食べていますか? おそらくほとんどの方は毎日一度は白いご飯をお茶碗によそって、食べておられるでしょう。しかしご存知の通り、日本の米の消費量は減少傾向にあります(下表参照)。また一人当たりの米の消費量に至ってはここ50年でほぼ半減している現状です。それだけ日本人のコメ離れ、食の多様化が進んだという事なのでしょう。ちなみに下表の国内消費仕向量とは「1年間に国内で消費に回された食料の量(国内市場に出回った食料の量)を表す量で、国内生産+輸入-輸出±在庫増減で計算され」る量の事です。(農林水産省HPより抜粋)自給率の分母になる数字でもあります。

平成28年度食料需給表より筆者作成

 ただし、いくらコメ離れが進んだからといっても例えば「あなたの主食は何ですか?」と聞かれた場合、多くの日本人は「ご飯です」と答えるでしょうし、日本のように水資源の豊かな国にとって、米はベストな穀物でもあるでしょう。そうした面では、日本人の意識の中に深く根付いた食料資源であることに変わりはありません。

  

 お米の消費量の減少にはもちろん先ほど述べたような食の欧米化・多様化が要因として大きいのですが、農業従事者の方ならお分かりかと思いますが、米が生産されないのはそれだけが理由ではないんです。今回は作付け面積当たりの農業所得についてみてみましょう。農業所得は農業粗収益から農業経営費を差し引いたものになります。下図は水田作経営(水田で作付した農業生産物の販売収入が他のものと比べて最も多い経営)と野菜作経営(野菜の販売収入が他の販売収入と比べて最も多い経営)の表です。水田作と野菜作は必ずしも稲作のみ、畑作のみ、という意味ではないのでその点は頭の片隅に置いておいてください。

 図を見れば一目瞭然ですが、水田作経営はあまりもうからないのです。0.5ha未満だとむしろ赤字になってしまいますからね。

平成27年度農業経営統計より筆者作成(授業資料も参照した)

 少し偏ったた言い方にはなりますが、はっきり言った話、米を作るより野菜を作った方が金になります。ですからいくらお米は大切だなんだと言いつつも、消費量の減少や農業経営的な面を考慮すれば、「お米を育てるのはちょっとなぁ(-_-;)」となるんです。広大な耕作放棄地を見て「米作ればいいじゃないですか!」なんて気軽に言ってはいけないという事です。一方で野菜は稲作のようにトラクターや田植機などの機械で大規模にやる事が難しいため、肉体的に大変という事情もあります。こうした現状に少子高齢化が拍車をかけて、耕作放棄地の増加や農村の衰退を招いているのかもしれませんね。

 


 

 さて、ここまではお米を巡る現状に関して、消費量と農業所得の面から見たにすぎません。正直なところほとんど大学の授業の受け売りです。実際にお米を巡っては他にもさまざまな要素がありますが、なんとなくお米を巡る現状はイメージして頂けたかと思います。今回はきりが良いのでここでひとまず区切りますが、次回のコラムではこうした現状を理解したうえで、お米ってなぜ大切なのかを考えていきます。今年で減反政策が終わったのを機に、今後お米を巡る事情は大きく変わるかもしれません。そのような中で今回改めてお米について見つめなおす事で、「米」という一つの資源が持つ様々な役割について理解し、一つの食べ物にすぎないかったお米が価値を持った「資源」として感じられるよう、僕なりの解釈で話を進めていこうと思います。今週中には「お米と日本人 ②文化資源としてのお米編(仮題)」投稿予定です。数日の間、気長にお待ちください<m(__)m>。

 

 農林水産省のホームページの「よくあるご質問」のページに飛ぶと、関連した様々な語句を分かりやすく解説してくれているので興味のある方は是非ご覧ください。また今回掲載したグラフのデータは、政府統計の総合窓口とされている「e-Stat」から取ってきております。自分の欲しいデータを見つけるのには多少苦労しますが、日本国内の現状を分析する上で基本となる統計データが全てありますので、レポートや卒論でこれから重宝しそうです。

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地域学・どっと・こむ

金沢大学地域創造学類にて地域づくりについて本気で学ぶ現役大学生です。発展途上のサイトでまだまだ試行錯誤しながらですが、月に数本のコラムを投稿し、地域について考えるきっかけやアイディアが生まれるきっかけを創っています!

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